夏に人気のアクティビティ、カヤック。自然の中で鳥のさえずりや魚が跳ねる音を聴きながら、河川や湖、海で優雅に漕ぐと心が癒されます。しかし、一方で水難事故で命を落とす方が後を絶たず、自然の恐ろしさを実感させられることもあります。この記事では、カヤックを安全に楽しむために必要な服装と、習得すべき技術についてご紹介します。
カヤックと似ているアクティビティにカヌーがありますが、これらの違いをご存知ですか?
実は、カヤックとカヌーは舟の種類ではなく、使用するパドル(櫂)の形状によって区別されます。
カヤックでは両サイドにブレードがついたダブルブレード・パドルを使用し、カヌーでは片側にだけブレードがついたシングルブレード・パドルを使います。
そのため、カヤックではパドルを持ち替える必要がなく、カヌーではパドルを持ち替えながら漕ぐことになります。
ダブルブレード・パドル
シングルブレード・パドル
服装と靴
服装
基本的には外気温に合わせた服装を選ぶことが大切です。30℃を超える真夏日には、半袖や半ズボンでも快適ですが、日焼けや怪我を防ぐために、速乾性のラッシュガードとレギンスの着用をおすすめします。
素材としては、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維が最適です。綿や麻、絹などは乾きにくいため避けましょう。濡れたまま風にあたると体が冷え、真夏日でも低体温症のリスクがあります。
アウトドアブランドにこだわる必要はなく、ユニクロやしまむらの商品でも十分です。ただし、寒い時期には低体温症のリスクが高くなるため、専用のパドリングジャケットやウェットスーツ、ドライスーツを用意しましょう。
靴
靴は、万が一カヤックから転落した際にも脱げないよう、かかとがしっかりと固定されるものを選びましょう。かかとがないスリッパやサンダルは避けてください。また、夏場は特に苔が多く、滑りやすくなるため、滑り止め加工が施されたソール(フェルトやラバー製)が非常におすすめです。
その他
さらに、パドルを一生懸命漕ぐと手の皮が剥けたり、肉刺ができたりすることがあります。これを防ぐためには、速乾性の手袋を着用するのがおすすめです。また、熱中症予防のために速乾性の帽子をかぶり、水中の様子を見るための偏光サングラスがあれば、さらに快適にカヤックを楽しむことができます。
命を守る装備品
PFD(ライフジャケット)
上で楽しむカヤックには、ひっくり返って溺れてしまうという命の危険が常につきまといます。流れや波の状況によっては、泳ぐことさえできない場合もあります。そのため、PFD(個人浮力装置)はカヤックを安全に楽しむために必須のアイテムです。暑い日でも必ず着用しましょう!
PFDは適切に装着しないと意味がありません。まずは正しい装着方法をしっかりと身に付けましょう。装着方法は種類によって異なりますが、基本的にはすべてのファスナーとベルトを締め、苦しくない程度に体に密着させます。特にウエスト回りのベルトは肋骨より上に来ないようにしっかり調整しましょう。
ヘルメット
ヘルメットは、ひっくり返る可能性が高いカヤック(ダウンリバーカヤックやフリースタイルカヤックなど)を使用する場合、頭部を守るために必須ですが、それ以外のカヤックでは着用する必要はありません。
その他
万が一の場合に備えて、助けを呼ぶためのホイッスルや携帯電話を携帯すると、さらに安心です。
通常、カヤックを有料でレンタルする場合、PFDやヘルメットなど命に関わる装備品はカヤックと一緒に提供されます。もし提供されない場合は、レンタルを断ることを強くおすすめします。
習得すべき技術
乗降
カヤックで最もバランスを崩して転倒しやすいのは、乗り降りの際です。基本をマスターして、怪我を防ぎましょう。
乗艇時
- カヤックを岸ギリギリまで近づけます。
- パドルを後ろ手に持ち、カヤックのシート後方と岸にパドルを押し付けてカヤックを安定させます。
- なるべく低い姿勢で、パドルのシャフトに重心を置きながら、奥の足と腰をシートに入れます。
- 最後に手前の足をシートに入れます。
※コックピットが狭いカヤックの場合は、両足を先に滑り込ませてから最後に腰を入れます。
降艇時
- カヤックを岸ギリギリまで近づけます。
- パドルを後ろ手に持ち、カヤックのシート後方と岸にパドルを押し付けてカヤックを安定させます。
- 手前の足を出して岸に乗せ、なるべく低い姿勢で腰を上げ、岸に乗せた足に重心を移します。
- 最後に奥の足を出します。
前進・後退・右旋回・左旋回・停止
前進する時は、ブレードを前方に入れて引き寄せるように漕ぎます。逆に後退する時は、ブレードを後方に入れて押し出すように漕ぎます。旋回する時は、旋回したい方向の反対側のパドルだけを使って漕ぎます(例えば、右に旋回する場合は左のパドルだけを漕ぎます)。最後に停止する時は、左右のパドルを交互に水に入れて漕ぎ、その抵抗で止まります。
これらの操作は、実際に水上で練習すればすぐに理解できるでしょう。
再乗艇(セルフレスキュー)
カヤックは横から波や流れを受けると簡単に転倒してしまう乗り物です。転倒したカヤックを起こして再乗艇するにはコツと体力が必要ですが、非常に重要な技術です。パニックにならずに落ち着いて再乗艇できる技術を身に付けましょう。この技術を習得しないと、毎回救助を待つことになってしまいます。※岸から近い場合は、泳いでカヤックを岸まで持っていくことも可能です。
- まずはカヤックから脱出して心を落ち着かせましょう。PFDを装着していれば、溺れる心配はありません。
- カヤックが横転している場合は、カヤックの反対側または先端をつかんで起こします。
- 次にカヤックの横に移動し、コックピットのサイドをつかみます。
- 体が水面と平行になるようにバタ足をします。
- カヤックを自分の体の下に引き込むようにして、バタ足の反動を利用してカヤックの上によじ登ります。
- 低い姿勢のまま体を旋回させ、シートに座ります。
- 最後に足を曲げてカヤックの中に入れます。
言葉にすると簡単ですが、実際にやってみるとなかなか難しく、体力を使います。また、人によっては後方からよじ登る方が簡単なこともあります。練習を重ねて、自分に合った再乗艇の方法を見つけてください。どうしても再乗艇が難しい場合は、「パドルフロート」という道具を使用すると、より簡単に再乗艇できます。
↓こちらの参考動画をご覧ください